聖書の人物を訪ねて
アガグ人 ハマン
エステル記(BC486~465)の舞台はインド北部からエチオピヤまでの広大な領土を支配するペルシ ャ帝国の都で起こった出来事が中心に書かれています。その国で出世街道を一気に登り、王に次ぐ地
位にあったのがアガグ人ハマンです。昔エジプトにいたイスラエル人がモーセに率いられて出エジプトし た時、最初に攻撃したアマレク人の子孫で、主は天からアマレクの記憶を完全に消し去るであろうと言わ
れました。イスラエルの初代のサウル王(BC1000年頃)にこのことを命じられたのですが、アガグ王を 殺さずにおいたため、アマレク人の中でアガグの子孫が残り、その一人がハマンです。
民族紛争は今日の世界でも大きな問題です。第三者にとっては過去の歴史がわからない限り、問題の 根本もなかなか理解できません。ハマンはモルデカイが自分に敬意を表わさなかったので気を悪くしてい
ました。ある日モルデカイがユダヤ人だと分かった時、彼だけを罰するだけでなく、その民族すべてを滅 ぼすことを考えたのです。昔サウル王によって同族が殺されたので、その仕返しをする時と考えたので
す。ハマンは王に取り入って、国内にいるすべてのユダヤ人を滅ぼす日を決めました。モルデカイは王 妃となっている養女エステルに王に直訴することを勧めました。エステルにすれば同族が滅ぼされるか、
救われるかは自分の態度にかかっていることで、断食して祈りました。三日後、王の召しがないままエス テルは内庭に進んでいくと王が金の笏を伸ばしてくれて面会することができました。彼女は王とハマンを
酒宴の招きたいと申し出ました。ハマンは自分は特別に選ばれていることを知り喜びました。
エステルが王とハマンを二回目に招いた時、彼女は王に対して自分の民族が滅ぼされることを嘆き、 それを仕組んだのはここにいるハマンですと告白したことで、ハマンが処分されました。ハマンにとってモ
ルデカイ一人のことで気を悪くしたことが、最後に自分自身が滅ぼされることになってしまいました。人を 憎むことは決して小さな罪ではありません。少しのことで人間関係がこじれたり、厳しい言葉を聞くことで
憎しみが生じたりします。残念ながらハマンはその憎しみに対して何も対処せず、最後は憎しみを個人 から民族の滅亡へと考えたのです。罪の心の恐ろしさがここから見えます。
参照 エステル記1~8章