大阪城東福音教会

泉のほとり

2025年10月


 古いイタリア映画『道』、ご覧になった方はいらっしゃるでしょうか。子どもの頃、映画好きの母に連れられて名画座で観たことは覚えているのですが、理解するにはあまりに幼くて、ただ悲しげなトランペットの音色だけがかすかな記憶に残っている程度でした。数十年が経ち教会に通うようになったとき、たまたまテレビでその『道』を観たのです。粗野で乱暴な大男ザンパノは大道芸人で、知的障害のある無垢な女の子ジェルソミーナにラッパを厳しく仕込み助手をさせて稼いでいました。もう一人の登場人物はサーカスではたらく芸人イル・マットで、彼のせりふには暗に聖書の言葉を連想させるものがあります。ある日ザンパノはイル・マットを撲殺してしまいます。そしてジェルソミーナを雪山に放置したまま逃亡してしまうのです。数年が経過した最後の場面、彼女が死んだことを知ったザンパノが夜の浜辺に突っ伏して泣き崩れる姿が映し出されます。打ち寄せる波の音と激しい慟哭が重なり、彼の悔い改めの深さを際立たせます。はたしてこれほどの悔い改めを経験しただろうか、彼のような悪人に比べれば、自分はましな人間だなどとつい考えてしまいます。「罪の多くあるところには恵みも満ちあふれている」「少しだけゆるされた者は、少しだけしか愛さない」改めて十字架の死とその恵みに引き戻されます。(I)