泉のほとり
2025年 9月
「『だいたいお母さんてものはさ
しいん
としたとこがなくちゃいけないんだ』
その声にふりかえると、お下げとお河童のランドセルがゆれてゆきます」
これは茨木のり子の詩『みずうみ』の一節です。子どものほうがよほど落ち着いて母親の忙しい日常をみているのでしょうね。
「人間はだれでも心の底にしいんと静かな湖をもつべきなのだ」、
「教養や学歴とはなんのかんけいもないらしい
人間の魅力とは
たぶんその湖のあたりから
発する霧だ」と、続きます。
豊かに水を湛え、ほとんど波立つこともない凪いだ湖を内にもっているとしたら、そして湖面から立ち昇る霧がキリストのかおりなら、なんと幸いな人でしょう、周りの人たちにとっても。(I)