泉のほとり
2023年10月
バリアフリーという言葉もまだない頃の出来事です。白い杖を持った人が横断歩道のない道路を渡ろうとしていました。こういう場面で声をかけるのは案外勇気が要るものです。その方の二の腕に手を添えて一緒に渡ろうとしたところ、逆に腕を掴み返されました。咄嗟のことにびっくりしましたが、手の平から伝わってくる力強い感触の記憶は年月が経っても消えることがありません。考えてみれば私たちの人生も見通しのよい道ばかりではなく、暗闇や霧の中を手探りで進まざるえないことがあります。主のみ言葉を支えの杖として、しっかり握って何とか前に進もうと努めるとき、私はこの視覚障がい者の方のことを思い出します。それでも気が付けば、主のかいなに深く抱かれて歩んでいたことに力が抜ける思いをしたことが幾度となくあるのですが。(I)